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近年急速な高齢化社会に伴って、関節の変形や炎症に伴い関節の痛みが強くなり要支援や要介護が必要になる方が増えています。その場合、スポーツをしたり旅行に出かけたりするようなリクリエーションも楽しめなくなり、生活の質が次第に下がってきてしまう原因となるほか、徐々に歩行能力が低下してきて最終的に寝たきりになってしまう危険性もあります。 手術以外の治療(保存治療)を行っても痛みが軽減しない場合や、徐々に歩行能力が低下してくる場合は、人工関節を用いた手術が有効です。人工関節置換術は全国で年間16万件以上行われており、非常に一般的な治療法となってきていますが、当院では2017年度よりナビゲーションシステムを導入し、正確で安全な手術を多数行っています。
ナビゲーションシステムとは、コンピューターによる支援手術のことです。たとえばカーナビはGPSからの情報を元に、正確に目的地に到着できるように運転者を支援しますが、このナビゲーションシステムでは、赤外線を使って体の骨の位置を正確にとらえて、術者が正確に早く手術ができるように支援をしていきます。
1.変形性関節症
(1) 変形性膝関節症
加齢や下肢筋力の低下に伴って膝の関節軟骨が徐々に摩耗してくる疾患です。 関節軟骨のすり減りにより徐々に膝がO脚やX脚に変形してきて、それに伴い、膝の曲がりも徐々に悪くなってきてしまいます。膝の痛みが強くなってくると日常生活での歩行や、階段の上り下りにも影響が出てきます。
(2) 変形性股関節症
股関節は大腿骨にある球状の大腿骨頭と骨盤にあるお椀のような形をした寛骨臼からできている関節です。しかし、加齢や肥満などで関節の軟骨が徐々に変性し、すり減ってきます。さらに臼蓋形成不全(寛骨臼が浅い)や過去に先天性股関節脱臼がある時には、進行がすすみやすくなります。関節の軟骨のすり減りが少ない場合は、自分の骨を利用した骨切り術などの手術が行えますが、すり減りが大きくなってくると人工関節置換術が必要となります。
2.関節リウマチ
この疾患は全身の関節におこる病気です。関節の中にある滑膜が炎症を引き起こして起こる疾患です。一般的には薬や注射などの全身の治療を行いますが、膝や股関節の痛みが強く、日常生活に支障が出てくる場合は人工関節置換術を行うことがあります。
<治療法>
(1)保存治療(手術治療以外の治療)
まず減量や下肢筋力の増強など行い、投薬などの治療も行ってきます。場合によっては、関節内に注射を行います。
(2)手術治療
保存治療を十分行っても痛みの改善が十分でなく、徐々に歩いたり、階段を上ったりするなどの日常動作に支障が出てくる場合は手術治療を行います。
ア 人工膝関節置換術
これは痛んだ軟骨の表面を切除して、コバルトクロムなどの金属やポリエチレンでできた人工関節を骨の上にしっかりと固定する手術です。固定には、骨セメントという接着剤を用いて行います。また変形が関節の内側や外側に限局しており、変形があまり強くない場合は、人工膝関節単顆置換術という人工関節や高位脛骨骨切り術といって自分の骨を残して行う手術もあります。
イ 人工股関節置換術
痛んだ大腿骨頭や寛骨臼を取り除いて、人工の股関節を設置します。けずれて失ってしまった骨は修復し、できる限り本来の関節に近い状態に再建します。股関節周囲の筋肉にはダメージが残らないように心がけて手術を行っています。年齢や変形の程度を考慮して手術を行っており、手術方法によって手術後のリハビリテーションは違いがあります。
1 人工膝関節置換術
リハビリテーションの担当者が手術前の状況を評価して手術後の効果的なリハビリテーションの計画を立てます。
無理のない範囲で膝関節を動かす練習を始めます。
歩行器を用いた歩行練習を始めます。
可能であれば杖を用いた歩行練習を徐々に開始していきます。その後、階段の上り下りなどの練習を行い、歩行が安定した段階で退院となります。
2 人工股関節置換術
リハビリテーションの担当者が手術前の状況を評価して手術後の効果的なリハビリテーションの計画を立てます。
無理のない範囲で股関節を動かす練習を始めます。
歩行器を用いた歩行練習を始めます。
可能であれば杖を用いた歩行練習を徐々に開始していきます。その後、階段の上り下りなどの練習を行い、歩行が安定した段階で退院となります。(変形が強い状態では、もう少し時間をかけてリハビリテーションを行う場合があります)
手術を正確に行っていても、手術に伴っておこる危険性を合併症と言います。合併症には以下のようなものがあります。また当院ではこのような予防対策を行っています。
当院では、これらの合併症ができるだけ起こらないよう、細心の注意を払って手術を行っています。
毎週月曜日の午後及び毎週金曜日の午前に、人工関節専門外来を行っております。