足柄上病院ジャーナル
平成21年10月1日号

足柄上病院の病院理念
「あ」:安全で安心な医療を提供します。
「し」:社会の要請を担う政策医療を展開します。
「か」:患者中心の医療を実践します。
「み」:魅力ある自立した病院を目指します。

秋号(通刊 第33号)

親しまれる病院づくりをめざして

看護局長(認定看護管理者) 高橋親子

 本年4月、足柄上病院看護局長として着任いたしました高橋です。どうぞよろしくお願いいたします。看護局は病院職員数の60%以上を占めており、もっとも職員数が多い部門となっています。それだけに病院の運営に大きく影響することを自負し、職員一丸となって皆様に信頼され親しまれるような病院作りを心がけていく所存です。
 足柄上病院の主な取り組みは
 @ 高齢者医療の充実を目指し、入院中はもとより退院後の生活を視野に入れ患者さん一人ひとりに合ったケアを提供すること 
 A 患者さんがいつでも安心して受療できるよう、この9月より救急医療体制を医師3人当直制とし充実したこと 
 B 助産師による院内助産、母乳・育児指導、患者さんの希望を重視したフリースタイル分娩など質の高い妊産婦ケアが充実していること 
 C 地域医療連携室が窓口となり、退院支援や地域医療連携の強化を図っていること 
 D 認定看護師による専門看護外来(ストーマ・糖尿病フットケア)やがん化学療法を受ける患者さんの看護相談などがあります。
 次に看護局長として看護局の目指す方向性を次のように考えています。○病院を利用される皆さんや地域の方にとって信頼され必要とされる存在となるために、患者さん中心の看護を探求します。○組織は人なりという考えに立ち、相手の個性を受けとめ認め、個人が課せられた責任を果たすという信頼関係を基盤として、自分も他者も含めた人を大事にする組織運営をしていきたいと思います。○組織の方針に寄与し、やりたい看護を実践でき、専門職として自分自身の成長を主体的に行う自立した看護師の育成を目指します。
 県立病院唯一の総合病院である足柄上病院は、患者さん、地域の皆さん、職員が病院に愛着を持ち、病院を大事にしているところがとても魅力的です。私は今年3月まで神奈川県立の専門病院(がんセンター、こども医療センター、循環器呼吸器病センター)を中心に勤務してまいりましたが、これまでの経験を生かしより良い病院運営に向けて尽力してまいる所存ですので、皆様のご協力をお願いいたします。

『がん性疼痛看護認定看護師』としての私たちの活動

4A病棟 香川仁美
4A病棟 善波いづみ
5B病棟 小林幸子
看護教育科 露木裕子

 はじめまして。私たちは、院内の『がん性疼痛看護認定看護師』として、外科病棟・内科病棟・看護教育科に所属し、病院全体を対象として活動しています。
 主な活動は、患者さまやご家族の、がんの痛みに関連した症状や心の負担が和らぎ、少しでも快適な生活を送っていただくための看護ケアや相談です。また、日々変化する患者さまの状況に応じた対応が行えるよう、看護スタッフの教育や、医師・薬剤師など他職種との調整を行っています。
 平成20年には、患者さまとご家族向けのパンフレット『がんの痛みと上手に付き合うために』を作成しました。以下にその内容の一部をご紹介いたします。

●「痛み」は治療できる症状なの?
  「痛み」は我慢する事で、やる気を失ってしまったり、生活が不自由になってしまう事があります。患者さまには「痛み」を和らげるための薬を使う権利が、医師には「痛み」を治療する義務があります。痛みは治療できる症状であり、病気の治療と同時に行えるものなのです。
●「痛み」を感じたら我慢した方がいいの?
  「我慢は美徳」「薬を使うと身体に悪い」など、痛みや薬についての誤解が見られます。しかし、痛みは我慢し続けると「なかなか痛みが和らがない」などにつながる事が多いため、痛みは軽いうちに和らげる事が大切です。
●「痛み」を伝えるにはどうしたらいいの?
  痛みの感じ方はそれぞれで、ご本人にしかわかりません。医師や看護師が痛みについてうかがった際には、いつからどんな風に痛いのかなど、感じたままを率直にお伝えになる事が重要です。
● 痛みの治療は何が目安なの?
  「夜ぐっすり眠れる」「静かにしていれば、痛くない」「歩いたり身体を動かしても痛くない」が目安です。まずは、夜の睡眠がしっかりとれる事が痛み治療の第一歩となります。
● 痛み止めにはどんな種類があるの?
  痛みを和らげる薬の種類は、数多くあります。主なものには、頭痛や歯痛で使う「消炎鎮痛薬」と、医療用麻薬「オピオイド鎮痛薬」などがあります。それらの薬は、痛みの種類や強さに合わせて選んで使っていきます。
● 麻薬を使っても本当に大丈夫なの?
  医療用麻薬は、医師が決めた量と時間を守れば「安全」です。痛みが和らげばいきいきとした生活ができるようになります。副作用はありますが、それを軽くする薬や方法がありますのでご安心ください。
●「痛み」や「痛みを和らげる方法」については
 誰に聞けばいいの?
  何か気付いた事がありましたら、担当の医師・看護師・薬剤師に遠慮なくお尋ね下さい。
 毎日ではありませんが、私たち『がん性疼痛看護認定看護師』もおりますので、看護師にお気軽にお声かけ下さい。

 尚このパトは、外来や病棟に設置してありますので、是非ご活用下さい。
皆さまが、がんの痛みと上手く付き合い、いきいきと生活できますよう…医療スタッフ一同、心よりお祈り申し上げております。

私たちが出会う全ての赤ちゃんのために
―3A病棟・新生児心肺蘇生法(NCPR)全員取得の取り組み―

小児科医師 酒井潤子

 “産まれた赤ちゃんが泣かない”“心音が低下している”“ミルクを吐いた後呼吸が止まった”“顔が真っ青になってしまった”そんな時あなたはどうしますか?想像すると少し怖い気がしますが、お産や新生児に関るスタッフは時々遭遇します。(新生児仮死は1000のお産に対し4−5人と言われています)このような事態でも、スタッフがオロオロせずに目の前の赤ちゃんに対して直ちに行わなければならないことがマニュアル化されているのが、今回紹介させていただくNCPR(Neonatal cardiopulmonary resuscitation)新生児心肺蘇生法です。
 当院3A病棟では新生児にかかわる者として当然持つべき知識・技術として、病棟スタッフ全員が日本周産期新生児学会認定の講習会を受講しました。それに先立ち小児科医2名がNCPRインストラクターの資格を取得、その後NCPR院内講習会を計6回開催しました。このNCPRは最近ようやく普及してきた所であり、スタッフ全員が取得しているのは県内では当院だけです。
 お産を取り巻く環境は全国的に厳しいのは皆さんご承知の通りだと思います。当院では条件つきではあるものの院内助産(異常がなければ産科医なしで複数の助産師によるお産)が始まっています。残念ながらリスクのない全てのお産に小児科医が立ち会う事は不可能であり、異常事態が発生した際にはその場にいるスタッフが初期蘇生をしなければなりません。リスクのないお産でも何が起こるかわからないのがお産です。小児科医が到着するまで数分であったとしても、その間に適切な処置がなされるかどうかは、赤ちゃんとその家族の未来を左右することにもなります。小児科医がいる所まで搬送しなければならない医院や助産所などではこのNCPRを身につける事は特に有意義であると考えられています。
 NCPRの特徴は、産科・小児科医、助産師、看護師どの職種であっても行う内容に差がなく、*注1プロトコルも1つしかなくわかりやすいのが最大の特徴です。長年の経験があり、個々のやり方で新生児蘇生を行い助けてこられた産科の先生方や助産師さんは多くおられる事と思います。NCPRはそれらのやり方を否定するものではなく、あくまでも*注2エビデンスに基づいたチーム医療の普及を目指しています。
 3A病棟講習会後の成果として感じることがいくつかあります。最大の成果は蘇生の場面でそこにいるスタッフ全員が同じ方向を向いて蘇生できているという事です。例えば羊水混濁があった時「○サイズのチューブ!」と言わなくてもそれは用意され、次に行う処置まで皆が想定でき準備ができています。チーム医療が円滑に行われるということはそのまま蘇生率の向上となり、赤ちゃんの利益につながります。
 このような蘇生技術は毎日使うものではありません(あっては困ります)。そのため、具体的な蘇生技術を忘れてしまうことも大いに考えられます(人は忘却の生き物であり、忘却できるから生きていけるのでしょうけど)。しかし、災害は忘れた頃にやってくるものです。よって、3A病棟では時々メンテナンスの意味の講習会も開催する予定です。将来的には病棟のスタッフがインストラクターとなり、普及と技術維持のためのメンテナンスを行っていってくれるものと期待しています。
 現在神奈川県では産婦人科医会とNCPR普及事業に参加するインストラクター資格を持つ小児科医が協力し、NCPRの普及のため各地で講習会を開催しています。病院・医院・助産所など新生児に関わる方の多くに是非参加して頂きこのNCPRを身につけて頂きたいと思います。

*注1 プロトコル…あらかじめ定められた治療計画。
*注2 エビデンス…ある治療法がある病気・けが・病状に効果があることを示す証拠、検証結果。

地域医療連携室の役割

地域医療連携室長 笠原彰夫

 6月付けで地域医療連携室長に就任致しました。初代室長が、紹介予約制、医療相談、福祉相談、看護保健相談の基本的業務の整備を目指し、前任は病診連携の充実に実績を残しました。次のステップとしては疾患別医療連携、医療関連職種別連携になると思います。
 患者さんが24時間安心して良質な医療を受け、不安なく在宅で快適な生活を過ごす事が出来るよう病院の受け入れ体制の整備のみでなく、医療・保健・福祉の一体的な支援を提供出来る事が連携室の責務と思います。

 病診連携の強化
 4月から、連携室所属の看護師、ソーシャルワーカーと共に、神奈川県西部、静岡県東部の病院、診療所、介護老人保健・福祉施設、訪問看護ステーション等、約70か所を訪問し、足柄上病院に対する要望、御意見を頂戴してまいりました。外来や業務の間、貴重な時間をさいて頂いた事に紙面を借りてお礼申しあげます。
 訪問の結果ですが、病院職員の態度・対応の悪さや、結果報告の欠如や遅延に対する忌憚のないご意見を頂きました。少々へこみましたが、一方で感謝されることも多く、自分の事のように喜んだ事を覚えています。
 全国的な医師不足問題は当院も例外でなく、少人数での対応で、体力的にも精神的にも限界が近づいています。その一方で、保険改正、医療法改正による医療費抑制のもと、累積赤字の改善が求められています。患者さん、病院職員双方に負担がかかります。これらを解決する方法は、地域完結型医療の実践に尽きると思います。従来のように、一つの病院が、急性期から慢性期や終末期、或いは、プライマリーケアから高度専門医療まですべてまかなうのには限界があります。 地域の医療にかかわる全ての医療機関がお互いにその機能を補充しあい、地域全体で効率的な、そして全人的な医療を提供する必要があります。この体制つくりこそ、連携室の責務と考えます。

 かかりつけ医の啓蒙
 病院から地域の先生に紹介の際、患者さんには、病院から見放されたという誤解が生じがちです。ホームドクター及び、後方支援としての病院の在り方を考えないといけません。病院医師は日々研鑽をつみ、高度医療機器を駆使し、他科との連携を図って地域の期待に答えなればなりません。

 在宅急変時の対応
 在宅療養患者さんは増える一方で、地域の訪問看護ステーション、介護施設は許容限度を超えており、慢性的疲弊状態に陥っております。その結果、地域の診療所医師への負担は増え続け、今後解決すべき大きな課題となっております。解決のためには、医師会、訪問看護ステーション、介護老健施設、介護福祉施設との密な連携が必要となり、課題は山積みです。当院が地域に根ざした中核病院として、患者さんは勿論、他の医療機関からも信頼される医療連携の実践に向け、スタッフ一丸となって頑張って行きたいと思います。

放射線科の紹介

診療放射線技師 川越広範

 足柄上病院放射線科は放射線科常勤医師2名、非常勤医師1名、診療放射線技師12名、事務員1名で構成されています。
 診断部門ではマルチスライスCT、MRI、RI体外測定装置、血管造影撮影装置、乳房撮影装置、TV装置、一般撮影装置を有し、地域の皆様方に安全、安心の医療を提供できるようスタッフ一同、日々努力しています。
 そして足柄上病院放射線科では地域医療連携の中で<高度医療機器共同利用外来>を開設させて頂いています。毎週火曜日、水曜日の午前中でご依頼戴いた当院以外の医療施設からの紹介患者様の検査および読影を行い、検査結果のフィルムと読影報告書を提出させて頂いています。共同利用検査はMRIとCTが大部分を占め、平成20年度で(MRI)240人(CT)281人(RI)3人ほどのご利用実績がありました。
 治療部門においては4月に治療計画装置を一新し、毎週金曜日の午後に非常勤の放射線治療専門医師による放射線治療計画を行い、翌週から放射線治療を実施しています。現在は院内からの併診のみとさせていただいていますが、将来的には院外からの紹介も受けたいと考えております。
さて今回は皆様方に安心して検査を受けていただくために放射線技師の立場から当院放射線科の主な検査装置について特徴や原理をわかり易く簡潔に説明させて頂きたいと思います。
1)マルチスライスCT
 X線を使って体の断面を撮像する装置です。複数列の検出器を装備することで同時に多数の断面画像が1度のX線照射で撮影できます。肺疾患や脳疾患(クモ膜下出血、脳出血)、腹部臓器の状態を検査するには有効な装置で、正確な診断をするために現代の医療には不可欠な検査装置となっています。
2)MRI(磁気共鳴画像診断装置)
 MRIとは強い磁石と電波を使って体の断面を撮像する装置です。脳疾患(脳梗塞、脳腫瘍)や骨盤内病変(婦人科疾患、前立腺等の泌尿器科疾患)や整形外科領域(椎間板ヘルニア等)の疾患には非常に優れた検査装置です。
しかし、心臓ペースメーカーの埋め込まれている方や狭いトンネルの中が我慢できない閉所恐怖症の方は検査が出来ません。その他にもたくさんの注意事項がありますので検査を受ける際には担当の先生や看護師、放射線技師の説明をよく聞いて御確認ください。
3)血管造影撮影装置
 血管に細いカテーテルと呼ばれる管を挿入し、その管から造影剤という薬剤を注入してさまざまな体内血管を撮影する装置です。血管を撮影するだけではなく直接治療薬を注入したり、細くなった血管を拡げたり、血管を塞いで出血を止めたり等の治療もします。脳疾患(脳動脈瘤、脳腫瘍)、心臓疾患(心筋梗塞)、胸腹部臓器の血管、上下肢血管等の検査・治療に不可欠な装置です。
4)RI体外測定装置(核医学)
 微量のガンマ線という放射線を出す少量の薬“放射性医薬品”を投与し、シンチレーションカメラという装置で薬の体内分布の様子を画像化する装置です。脳血流、心筋の評価や骨の異常、悪性腫瘍の診断に広く使用されています。
5)リニアック
 これは上記1)〜4)までの検査用の装置とは違い、放射線治療装置の1つです。X線や電子線を照射して腫瘍等の治療をする装置で、一般的な撮影に使うX線よりはエネルギーが遥かに高いことが特徴です。最近では治療計画装置等の発達により精密かつ安全で後遺症の少ない放射線治療が可能になっています。

 まだ説明できていない装置もありますが、放射線装置や技術は日進月歩で進化しています。皆様の参考にしていただき、安心して検査を受ける指標になれば幸いです。

県立足柄上病院・中井町共催  住民のための「医学講座」
めざせ! 生き生き家族
第13回 身近な誰かが倒れたときあなたならどうしますか?           
〜心肺蘇生術、AED(自動体外式除細動器)の使い方〜        

日 時: 平成21年10月31日 土曜日 10:00〜12:00
会 場: 中井町保健福祉センター2階 集団指導室
       (中井町比奈窪104−1 町役場庁舎となり)
      
講 師: 足柄上病院 循環器科部長 清水智明
           臨床研修医、看護師  
対 象: どなたでも
参加費: 無料
定 員: 40名(申込み制・先着)

電話またはFAXで、@氏名、Aお住いの市町村、B電話番号をお知らせください。
         *定員を超え、ご参加いただけない場合のみご連絡いたします。

申込み・問合せ先
〒258‐0003 松田町松田惣領866−1  県立足柄上病院 医学講座担当
(電話)0465‐83‐0351(代表) (FAX)0465‐82‐5377

その他: 心肺蘇生術及びAED操作の実習を行いますので、動きやすい服装でお越しください。

発 行:神奈川県立足柄上病院
    〒258‐0003神奈川県足柄上郡松田町松田惣領866‐1
(TEL)0465‐83‐0351(FAX)0465‐82‐5377
    http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/byouin/asigarakami
編 集:神奈川県立足柄上病院地域医療連携室 (内線)3178