平成20年10月1日号
秋号(通刊 第29号)

県立病院の役割を将来にわたって果たしていくための一般地方独立行政法人による病院運営への移行について

総務局長        
矢野敏行

 日頃から、当院の運営に多大なご支援とご協力を賜り深く感謝申し上げます。
 本年3月に、知事が「指定管理者制度を導入している汐見台病院を除いた県立6病院(*1)について、平成22年度を目途に一括して一般地方独立行政法人(*2)に移行する方針」を発表し、現在、神奈川県病院事業庁で移行に向けた検討を進めております。
 そこで、県立病院の現状とその役割を将来にわたって果たしていくための一般地方独立行政法人への移行について述べさせていただきます。
 まず、県立病院の現状ですが、良質な医療サービスを提供するため、それぞれの病院の特性に応じた医療の充実に努めるとともに、きめ細かい病床管理を実施したり、医薬品の共同購入を行うなど、様々な経営改善に取り組んでおります。その結果、病院事業庁全体の決算では、経常収支ベースで、平成17年度から3年連続の黒字を達成したところであります。
 しかし、病院の収入に直結する診療報酬のマイナス改定などにより、公立、民間を問わず、多くの病院では経営が苦しくなりつつあるとともに、病院によっては、看護師の不足などにより、必要な医療提供体制を整備することが困難になっているなど、病院経営を取り巻く環境は厳しさを増しております。
 さらに、こうしたことに加え、本県の県立病院は、現在、様々な課題を抱えております。
 例えば、安全で安心な医療を提供する上で重要な7対1看護基準を実施するために、看護師の大幅な増員が必要であり、また、がんの受診患者が今後20年間で1.5倍になるという予測に基づき取り組んでいる、がんセンターの総合整備などを推進することが求められております。さらに、医療機器については、取得後10年以上経過し老朽化したものが約6割を占めており、早急に更新を進めていくことも課題であります。
 こうした課題を解決し、将来にわたって県立病院の役割を果たしていくために、昨年度、医療制度や病院経営などに関する外部の専門家の方々に検討を行っていただきました。その中で、県立病院が県民の皆様が期待する高度・専門医療や救急医療などを安定的に提供し続けていく上では、次のような地方自治制度に起因する制約があり、柔軟な運営を行うことが可能となる地方独立行政法人により病院経営を行った方が望ましいという結論になりました。

○ 県立病院が県民の医療ニーズに対応した質の高い医療サービスを提供するためには、それに必要な人員を配置する必要がある。しかし、県立病院は、県の組織の一部であり、神奈川県職員定数条例により職員の定数が決められており、行政改革の流れの中で定数の削減が求めれられているため、増員が困難であり、今後県民に必要な医療を提供することに支障が生じる。
○ 医療従事者の確保については、変化する医療ニーズに迅速で柔軟に対応することが可能となるような、年度途中での採用などの実施が必要となる。しかし、医師及び看護師以外の職種については、独自の採用を行うことができないため、職員の採用の意思決定から選考及び採用までに手間と時間を要し、採用時期や採用方法が限られている状況である。

 このような外部の専門家の方々の結論を受け、県として検討を行った結果、地方独立行政法人により病院経営を行うことにより、必要な職員体制の整備など、より柔軟で弾力的な病院運営を行うことが可能となり、また、こうしたことにより、病院経営を行う基盤を強化し、施設・医療機器の整備を進め、県立病院の役割を果たしていくことができると考えたところです。
 今回、県立病院を運営するために、新たに地方独立行政法人を設立する趣旨は、将来にわたって良質な医療を、できる限り県民負担の少ない形で提供するためには、県が直接運営する地方公営企業の形態よりも、地方独立行政法人による運営の方がふさわしいということであります。
 県立病院を運営する組織が、地方独立行政法人になっても、県立病院は県立病院であり、その役割や使命が変わるものではありません。
 足柄上病院は、現在、地域の中核的医療機関として、救急医療や産科医療、県西部地震に備えた災害医療拠点病院としての機能など重要な役割を担っており、今後も、救急医療の充実や地域において高齢化が進んでいる状況に対応した高齢者総合医療などを推進していく必要があると考えております。今後とも地域の医療機関や関係機関との連携を進め、医療ニーズに的確に応え、公的中核病院としての使命を担ってまいりますので、皆様方のご支援・ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

(*1)汐見台病院を除いた県立6病院とは、足柄上病院、こども医療センター、精神医療センター芹香病院、精神医療センターせりがや病院、がんセンター、循環器呼吸器病センターの6病院です。

(*2)一般地方独立行政法人とは、県立病院を運営するために知事が設立する法人(非公務員型)であり、県議会の議決を経て知事が法人に中期目標を示し、その目標を達成するために法人が策定する中期計画を議会の議決を経た上で知事が認可し、その計画に基づいて法人が病院運営を行います。また、県の附属機関である評価委員会が病院の運営実績について評価しますので、病院運営の実効性と公共性を担保することができます。

足柄上病院皮膚科における      臨床指標(クリニカルインディケーター)

皮膚科医長       
北川太郎

 私は2006年5月から皮膚科診療を担当させていただいている北川太郎と申します。皮膚科領域における臨床指標と言いますと広範囲熱傷の分層植皮術や皮膚悪性腫瘍の拡大手術などを指すと思われますが過去3年間当科ではそのような実績は残念ながらありません。植皮術の対象となる患者さんは皮膚科のみならず外傷などで生じた皮膚欠損の修復など外科領域での需要が多く、採皮の際必要な機器を今後整備し、対応できるようにしたいと思います。
 さて臨床指標の対象にはなりませんが、ここでは皮膚科におけるその他の主に外来で行なっている手術、処置について統計をお示しします。冷凍凝固法が多いですが、これはウイルス性の尋常性疣贅の患者さんで再診で何回も処置をしている方が多く、実数はこれの10分の1以下と思われます。冷凍凝固法は液体窒素で患部を冷却して凍傷を惹起し疣贅本体もろとも表皮を痂皮化、あるいは水疱化させて摘除する方法ですが病変の部位によって治りにくいところがあります。指先、爪の周りに生じた疣贅は難治性です。これらは神経が集中する敏感な部位のため零下190℃の液体窒素の痛みに患者さんが耐えられずしばしば充分に冷凍できない部位でもあります。昨年、週1回通っていらっしゃった難治性の手指のウイルス性疣贅の患者さんがしばらく来られなくなったと思ったら、ある日この患者さんが別件で外来受診の際、他院でレーザー焼灼術を受け、きれいに治った手をみせてくれました。当院に稼働中のレーザー焼灼装置は現在のところありませんがウイルス性疣贅だけでなく肉芽腫や黄色腫など瘢痕を残さず治療可能な器具として今後導入を検討したいと考えております。液体窒素療法の痛みに耐えられない小さなお子さんなどの難治性のウイルス性疣贅の治療として局所免疫療法があります。これは人工のかぶれ薬を局所に塗布し、軽い接触皮膚炎をおこし、局所に生じた炎症反応で疣贅ウイルスを退治するものです。効果が出るのに時間がかかることや有効率が低いことが難点ですが、漢方のヨクイニンとの併用で著効例があります。いずれにしましてもウイルス性疣贅は放置すると増大したり数が増えるのももちろんほかの家族に感染することもあり早めの治療が肝要と思われます。その他皮膚科では外来処置室で行なう小手術が多数を占めますが、頭部などあらかじめ比較的多目の出血が予想される部位の手術は中央手術室で行なっています。従来判で押したように切除していた足底の色素性母斑、いわゆるほくろですが近年ダーモスコピーの普及により切除せず様子観察例が多くなっています。しかし時々テレビの健康番組などで悪性黒色腫などをセンセーショナルに放送された直後などは診察室に入るやいなや青い顔をしながら靴を脱いで足底の母斑を見せる患者さんが多数訪れ、マスメディアの威力を思い知らされます。
 表の統計に入っていないもので外来でよくおこなう処置としては表皮嚢腫に対するくり抜き法を行っています。表皮嚢胞は別名粉瘤、アテローマといって真皮内から皮下にかけて表皮の構造を持った嚢腫、つまり袋ができるものです。この袋は皮膚が内側を向いているために中に垢が貯留します。しばしば炎症を伴って腫れることがあり排膿後も嚢腫壁が残っていると再発を繰り返します。嚢腫壁もろとも切除縫縮するとかなり大きな傷になることがあるため中央部に直径3ミリから5ミリの円筒形のメスで局所麻酔下に穴をあけ、角化物、膿、嚢腫壁を圧出するくり抜き法の方が傷が小さくてすみます。
 以上本題とはかけ離れた内容となりましたが当科の診療内容の一部をご紹介させていただきました。今後ともよろしくお願いします。

院内情報コーナー

足柄上病院・大井町共催
地域住民対象「医学講座」についてのお知らせ

足柄上病院では、お年寄りとご家族の健康づくりに皆さんと共に取り組んでいこうと、定期的に医学講座を計画しています。第10回は次のとおり開催いたします。
                       
めざせ! 生き生き家族
〜高齢者と、家族の健康をみつめる〜
からだへの気配り、はじめませんか?

日 時:11月8日(土) 10:00〜12:00
場 所:大井町中央公民館 2F第1〜4会議室
テーマ:「身近な誰かが倒れたときあなたならどうしますか?〜心肺蘇生法とAEDの使い方〜」
講 師:足柄上病院  循環器内科医師 清水 智明 臨床研修医 看護師 
参加費:無料
申し込み:FAXまたは電話
●FAX⇒氏名・年齢・住所・電話番号を御記載の上、以下のあて先にお送りください。
●電 話⇒0465−83−0351医学講座担当へお電話いただき、氏名・年齢・住所・電話番号をお知らせ下さい。

*お申し込み多数で、ご参加いただけない場合のみご連絡いたします。

FAX(FAX番号)0465−82−5377県立足柄上病院医学講座担当 行

服 装:講義と共に、心肺蘇生、AEDの使用体験があります。動きやすい服装でお越しください。
    
皆様のお申し込みをお待ちしております。 

*お問い合わせ…医学講座担当 

発 行:神奈川県立足柄上病院
〒258‐0003神奈川県足柄上郡松田町松田惣領866‐1
(TEL)0465‐83‐0351(FAX)0465‐82‐5377
http://kanagawa-pho.jp/osirase/byouin/asigarakami
編 集:神奈川県立足柄上病院地域医療連携室 (内線)3178