平成20年7月1日号
夏号(通刊 第28号)

在宅医療に対する足柄上病院の取り組み
(第5報)
−さらに充実した訪問診療を目指して−

地域医療連携室長     
中橋満

 足柄上病院地域医療連携室が訪問診療を開始して早や1年が経過しました。現在25名の泌尿器科の患者さんに対して、留置カテーテルの管理や終末期の緩和ケアを含めた在宅医療を行っています。歩行不自由のため往復のタクシー料金7000円位をかけて半日がかりで通院をされていた方や、家族の方が送迎のため1日仕事を休まざるを得ないような方々にとっては経済的にも肉体的にも大幅に負担が減り、大変喜んで頂いています。
 在宅医療を行うには当然泌尿器科領域だけを診察すれば良いという訳にはいかず、高齢に伴う循環器・呼吸器系疾患等の合併症にも対応できる能力が求められてきます(往診されている地域の先生方には敬服します)。泌尿器科一筋に仕事をして37年、他科領域の知識が乏しいにも拘らず長野県佐久総合病院の「あらゆる専門医療を在宅においても行えるようにする」という理念を目指すのは痴がましく、常日頃悩んでおりました。過日、病院幹部を交えた会議で相談したところ、看護師・薬剤師・栄養士・理学療法士・社会福祉士の面々が在宅医療に参加してもらえることになりました。看護師による継続看護、薬剤師による麻薬や抗癌剤の服薬指導、専門栄養士による栄養相談、理学療法士による在宅リハビリの継続、社会福祉士による在宅療養に伴う諸問題の相談など手厚い医療体制が期待できることになります。医師の協力は医師不足の現状では困難ですが、地域の医療機関の先生方のご協力をお願いして少しでも理想に近い在宅医療に取り組んでまいりたいと思います。
 医療事情の厳しい昨今、今後在宅医療の必要性は益々高まっていくことになります。私達病院職員としては従来の姿勢を変え、積極的に地域医療機関と協力し合って、患者さんが住み慣れたわが家での安らかな生活を営むことができるよう支援していきたいと思います。
 ※ 訪問診療をご希望される方は、ぜひ一度足柄上病院地域医療連携室にご相談下さい。(申し訳ございませんが、現時点では泌尿器科疾患に限定させて頂いております)

アドボカシー室の役割
ーより良い医療のためのパートナーシップを目指してー

アドボカシー室長    
嶋田康子

立場の違いからくるギャップ
 患者さんが病い、苦しみを抱えた上に、「うまく自分の意見や質問が言えない」「説明が十分理解できない」など医療者とのコミュニケーションがうまくとれず、病院の大きな組織の中で『孤独』な感情を抱いたというような経験をしたことはないでしょうか。また何気ないその一言、その対応に傷ついたり、不満に思ったりしたことはないでしょうか。
 医療者と患者さんやご家族との双方の立場の違いは大きく、ギャップがあります。患者patientの語源は「耐える人」という意味で、更にはパトス(pathos)「苦しみを受け取る」が語源といわれています。だからこそ医療者はそれぞれの専門知識、技術を駆使してその苦しみを取り除き、また和らげようと、治療に、看護に最善を尽くす訳ですが、このとき、痛み、苦しみをいたわる気持ち、思いやる心が基底にないとお互いの間に齟齬が生じやすいことも事実です。
当院のアドボカシー室(患者さん相談室)の特徴
 アドボカシーとは聞きなれない言葉ですが、「誰かの権利を擁護する」「誰かのために代弁する」という意味です。当院では「患者権利章典」を定め、患者さん中心の医療を目指し、その実践の場として、平成15年4月に患者さんの権利と利益を支援する「アドボカシー室」が病院長直轄で設置されました。昨年「患者さんの声が医療に生かされ改善につながっているだろうか」との視点から見直されました。名称に(患者さん相談室)を併記し、体制強化し、新たに私が医療ソーシャルワーカーとしての本来の職務を生かし担当することとなりました。相談員には、外部からの識者が専門性を活かして、その役割を担っています。すなわち、第3者機関ではないものの相談員は2.5人称の立場からできるだけ外部性を堅持したスタンスで、あくまで患者さんの目線で、じっくりお話を傾聴し、問題解決のために、「患者代弁者」としての相談支援活動を行っているところに当院の特徴があり、あえて「アドボカシー室」(患者さん相談室)、としている所以でもあります。
寄せられた苦情、ご意見、要望の状況
 19年度1年間にアドボカシー室に寄せられた相談、苦情、ご意見は95件。当事者の内訳は(図ー1)のとおり、医師に対しては全体の約40パーセント。これは、医師に対する期待の高さの表れとも捉えることができます。その他の職員、病院に対しての内訳では、受付対応に対する不満、待ち時間に対するもの、院内設備整備、院内清掃となっています。クレーム内容の内訳としては(図ー2)のとおり治療、看護の内容に関するもの、接遇、説明不足、^kコミュニケーションとなっています。特に医師について内容を分析してみますと、7割が説明不足、コミュニケーションのあり方から生じていました。今各方面で職業人として「説明責任」を果たすことが求められてきています。従ってコミュニケーションスキルを身につけることは医療者として当然のこととなっています。当院ではライフプランニングセンターのご協力を得て、模擬患者SP研修や、職員全員参加の接遇研修など、病院挙げて取り組んでいます。
アドボカシー室対応の実際
 ほとんどの患者さんは相談員が患者さんの目線で傾聴し、与えられた情報の整理、理解を深める事を通し、納得され、また当事者による説明を受けることで解決しています。必要と判断された時にはセクションの長や病院の幹部と話し合いの場を設定し、代弁者として同席することもあります。また繰り返されている苦情や、病院全体として改善すべき事案については「アドボカシー検討会議」で検討の上、病院に対し提言し、取組みを求めています。そして今後も透明性と実効性を高めていきます。
患者さんと医療者のより良い関係の構築のために
 医療はヒューマンサービスです。人間、「人と人の間」の営み故に、お互いにその立場の違いを認識し、相手の立場も理解した上で向かい合えた時、患者さんの心に響き、納得、満足してもらえる医療につながると考えます。立場の違いはあるものの本来双方が同じ方向を目指し、それぞれが果たす責務に取り組み、 パートナーとして協働したとき「新しい医療の質への転換」がなされるものと考えます。
 改めて「患者権利章典」を掲げました。その実現のためには多くの課題が医療者患者さん双方にありますが、そのための働きの一端をアドボカシー室は果たしていきたいと考えています。
^k
患者権利章典
 医療は誰のためにあるのか、何の為にあるのかを深く認識し、常に患者さんサイドに立った医療の実践を目指して、患者さんの権利に関して県立足柄上病院は次のことがらを大切に考え、行動します。
1 平等で公正な医療を受ける権利
2 選択の自由の権利
3 自己決定権
4 プライバシーの保護を受ける権利
5 情報を得る権利
6 健康教育を受ける権利
7 医療参加の権利
8 どんな状況下でも、適切な判断の下に意志が尊重され支援される権利

足柄上病院泌尿器科における臨床指標(クリニカルインディケーター)

泌尿器科医長      
渡邉岳志

 今回は泌尿器科癌に関する当科的治療の現状を具体的に述べさせていただきます。
 表に過去5年間の当科における癌関連の手術件数を示します。
 まず日本人にも増加しつつある前立腺癌ですが、前立腺生検(細胞を取ってくる検査)を受けた患者様のうち、癌が発見された率は、平成19年度でのべ154人中52名(33.7%)でした。この中で手術(前立腺全摘出術)を受けられた方は8名(15.3%)でした。
 これは御高齢であったり、基礎疾患存在のため手術を行うことが不可能だった症例もありますが、一方、発見が遅く、転移があるなど癌が進行していた為、手術の対象になりえない方が多いことも原因になっています。
 このため当科では前立腺癌の早期発見、早期治療をめざし、50歳以上の方ほとんどにPSA測定を行い、正常値をわずか超えた方、正常値内でも触診上癌が疑われる方などへも積極的に生検を行うよう心がけています。また一度生検で癌が出なかった方へも定期的なマーカー検診を行い、高値が続く場合何度でも生検を行い潜在的な癌発見に効果を上げています。これが表中の前立腺生検数の増加につながっているものと思われます。
 手術を受けられなかった方々へは、男性ホルモンを抑える薬を投与しつつ、症例によっては放射線治療の出来る病院で放射線療法を追加していただいております。
 是非皆さんも、人間ドックやお近くの先生に、前立腺癌マーカー(PSA)の血液検査を、年に1回で結構ですからお願いしてみて下さい。
 次に膀胱癌ですが、当科では一度の内視鏡手術で切除が難しかった場合、繰り返し内視鏡手術を行う、抗がん剤の膀胱注入と手術を組み合わせるなど、出来るだけ膀胱を温存するよう心がけています。また新患の方、再発の方とも内視鏡検査をしっかり行うことで早期発見が増え、これが内視鏡手術の件数増加に現れています。
 また内視鏡手術が無理な場合も、可能な限り部分切除に止められるよう考えております。どうしても膀胱を全部摘出しなければならない場合も、可能ならネオブラッダー、代用膀胱とし、手術前と同じ排尿が出来るような努力をしております。
 以上のことは腎臓、尿管の癌についても同様で、出来る範囲で部分切除による機能温存を心がけ、最近5年間の集計では、腎癌の腎全摘8例に対し、腎部分切除9例。尿管腫瘍に関しては尿管部分切除術4例となっています。
 このほか前立腺肥大症など癌以外の患者様も当院にお越しいただいており、表を見ると総手術件数も徐々に増加しているようです。
 今後も、地域の皆様のお役に立てる泌尿器科となれるよう、開業の先生方、周囲の病院と協力しつつ、一層努力してまいりたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。

院内情報コーナー

潜在看護師のための復帰支援研修のご案内

 近い将来看護師として社会復帰を考えられている方のために、病院の看護実践の現状を理解し、看護技術の再確認をする機会としてこの研修を企画しました。ご希望の方は、下記の要領にてお申し込みください。

1.日 時 平成20年9月2日(火)9:00〜12:30/平成20年9月3日(水)9:15〜16:30
2.場 所 足柄上病院 3号館1階 講義室
3.内 容 ・病院概要
      ・感染防止対策
      ・医療安全対策(技術演習を含む)
      ・病棟体験(看護師と共に行動し、看護場面を見学します)
4.申し込み方法 Eメールまたは FAXにて下記の内容をご記載のうえ、お申し込みください。
あて先 :県立足柄上病院 看護教育科 宛 
Eメール:yuuko.icie@pref.kanagawa.jp
FAX :0465−82−5377
記載内容:・住所 ・氏名(ふりがな)
・連絡先(Eメールアドレスまたは FAX番号)
・希望する病棟(外科系、内科系、小児・母性)
5.申し込み期限 平成20年8月13日(水)
6.持ち物 ・筆記用具
・ユニフォーム(ユニフォームの準備ができない方はご相談ください)
・靴(ナースシューズか白の運動靴)

*問い合わせ先 教育担当副看護局長 高橋  電話0465−83−0351(内線5517)


一日看護体験のご案内

 高校生の方に、看護師の仕事を理解していただき将来の職業選択の一助となる機会として多くの方にご参加いただければと思います。

1.日 時 平成20年7月24日(木)13:15〜17:00
2.対 象 近隣の高校生
昨年度の参加高校: 県立大井高校、県立山北高校、県立吉田島農林高校、県立足柄高校私立立花学園高校、県立小田原高校、県立大磯高校、県立西湘高校私立相洋高校
3.申し込み方法 昨年度の参加高校については、直接高校の進路担当の先生にお申し込みください。それ以外の高校の方は、看護教育科にお問い合わせください。
4.受付期間 平成20年6月13日(金)〜7月4日(金)
5.体験内容 ・病院の概要について
       ・看護場面見学
       ・ビデオ視聴
       ・体験後の話し合い

*問い合わせ先 看護教育科 電話0465−83−0351(内線5508) 

足柄上病院−山北町共催

第9回「医学講座」についてのお知らせ

めざせ! 生き生き家族
〜高齢者と、家族の健康をみつめる〜
からだへの気配り、はじめませんか?

テーマ: 「最近増えている“がん”」
      第一部:肺がんの診断と治療
      第二部:前立腺がんの診断と治療
日 時: 7月12日(土曜日)10:00〜12:00
場 所: 山北町中央公民館 3階 視聴覚ホール
講 師: 足柄上病院 内科医師    清水  泉 泌尿器科医師  渡辺 岳志
対象者: どなたでも参加できます。
参加費: 無料
申し込み:官製はがき又はFAXで、氏名・年齢・住所・電話番号を明記し、以下のあて先にお送
りください。

FAX0465−82−5377 県立足柄上病院 看護教育科 橋本千加子 行

その他: 休憩時間に血糖検査を行うことができます。
*お問い合わせ…看護教育科 橋本

時間外の会計業務について

1 新たな取扱い内容
足柄上病院では、平成20年4月から、診療費の計算や支払いなどの会計業務を深夜の時間帯を除く平日夜間、土曜日、日曜日、休日の時間外についても行っています。
2 時間外の取扱い時間及び場所
○平日(月〜金)
(時間)17:15〜22:00 (場所)3号館1階 時間外会計窓口
○土曜日、日曜日、休日等(年末年始休業含む)
(時間)9:00〜22:00 (場所)3号館1階 時間外会計窓口
(注)状況により、一部診療費の算定ができない場合もあります。
(問い合わせ先 医事経営課 内線 5102〜4)

発 行:神奈川県立足柄上病院
〒258‐0003神奈川県足柄上郡松田町松田惣領866‐1
(TEL)0465‐83‐0351(FAX)0465‐82‐5377
http://kanagawa-pho.jp/osirase/byouin/asigarakami
編 集:神奈川県立足柄上病院地域医療連携室 (内線)3178