平成20年5月1日号
春号(通刊 第27号)

皮膚排泄ケア認定看護師としての活動について

皮膚排泄ケア認定看護師  
橋本千加子

 認定看護師とは、特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて、水準の高い看護実践ができ、看護現場における看護ケアの広がりと質の向上を目的として、日本看護協会で認定している資格です。その中で、皮膚排泄ケア認定看護師とは、創傷・オストミー(人工肛門・人工膀胱)・失禁に関する専門的知識を持った看護師です。
 まず、褥瘡対策に関する活動についてご紹介したいと思います。褥瘡とは、床ずれとも呼ばれ、体重の集中する骨と寝具に挟まれた皮膚組織が圧迫され、「血の流れが悪くなり、皮膚やその下にある組織が死んでしまうこと」を言います。自分の意思で身体を動かすことができない方や、麻痺などで長時間圧迫が加わっていても痛みなどを感じられない患者さんに発生します。また高齢者は皮膚が弱くなっており、さらに発生しやすくなります。
 足柄上地区は、高齢化が進んでおり当院の入院患者さんも高齢者が多い状況です。平成19年度の統計では褥瘡を発生するリスクや褥瘡を持った患者さん(褥瘡統計対象者)は全入院患者の20.6%を超えており、その方々の平均年齢は75.5歳。後期高齢者(75歳以上)は褥瘡統計対象者の63.5%を占め750名でした。これらの患者さんに褥瘡が発生しないよう、また発生している患者さんには早期治癒へ向けられるよう、足柄上病院の褥瘡対策チームによる活動は平成14年から開始しております。計画的な体圧分散寝具の整備や院内学習会の実施、週一回の褥瘡回診、院内の褥瘡保有者の把握などを行っています。昨年度からは褥瘡ハイリスク患者ケア加算の算定も開始しています。この加算は褥瘡予防・管理が難しく重点的な褥瘡ケアが必要な患者(ベッド上安静であり、8項目の条件のうち一つでも当てはまる患者)に対し、皮膚排泄ケア認定看護師が予防治療計画に基づく総合的な褥瘡対策を継続して行った場合に算定できる加算です。昨年6月から算定を開始し、234名の患者さんに実施しました。この活動の効果としては、発生率の低下や治癒率の上昇がありました。平成18年度の褥瘡推定発生率は1.55%でしたが、徐々に低下し1.38%となっています。治癒率は平成18年度28.5%から33.8%となり治癒にかかる日数も院内発生では20.7日から12.9日と短縮しています。
 現在の医療制度では、入院期間は短くなっていく一方です。褥瘡を発生させないことがまず重要ですが、発生してしまった場合には治癒せず退院となる患者さんも多くいます。平成17年度褥瘡統計対象者のうち治癒せず退院した患者の割合は2.8%でしたが、平成19年度では5.8%と上昇しています。そのような患者さんに関しては地域の医療スタッフとの連携が重要となってきます。現在は褥瘡の画像をサマリーに添付したり、訪問看護師の退院前共同指導へ参加したりしていますが、今後さらなる充実に向けて検討が必要だと考えております。
 もうひとつの活動として、毎月第1・3金曜日の午後、ストーマ外来を行っています。ストーマとは、ギリシャ語で「口」を表す言葉で、特に手術によって腹壁に造られた開口部のことをいいます。腫瘍・炎症・外傷・先天奇形などのために、肛門・尿道孔以外の所に作られた新たな便や尿の排泄口の総称です。ストーマを保有していること自体は病気ではなく、上手に管理すれば手術前と同じように生活することができます。手術後、入院中に元の生活に近づけられるように指導をしますが、入院期間が短いこともあり、実際生活をしてみることで生じる疑問や不安もあります。そのような疑問や不安を解決し、より良い生活を送れるようにするためにストーマ外来が行われています。今までは外科外来の診察室を使用して行っていましたが、プライバシーを守り、ゆったりした空間で指導が行えるよう、3号館3階にスキンケア指導室を確保しました。現在は月2回の午後と限られた時間で行っていますが、将来的には医師の受診時にストーマケアも行えるようにしていきたいと考えています。
 褥瘡もストーマケアも、入院中だけでなく退院後も定期的にフォローする必要があるものです。地域の医療スタッフとの協力や、外来の充実は今後さらに重要になってくると思います。地域の皆様方のご意見も伺いながら、より充実させていきたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。



足柄上病院のドクター紹介
シリーズF  〜新任の医師〜
@診療科  A専門分野  Bモットー(座右の銘)  C趣味

滝澤憲一
@総合診療科A消化器B努力C登山

吉田佳織
@総合診療科A循環器BやさしいきもちC旅、おいしいもの

檜佐彰男
@総合診療科A循環器BなんとかなるC映画鑑賞サッカー観戦

酒井潤子
@小児科A小児一般B人に優しく、自分にも優しくC離島旅行、パン作り

荘 沢亮
@整形外科Aスポーツ整形外科関節鏡(膝・肩など)B丁寧であることCスポーツ

野間大督
@外科A外科一般B出された物は全部食べるC旅、写真

前田和彦
@整形外科A整形外科一般B誠心誠意Cゴルフ スポーツ観戦

白水牧子
@脳神経外科A脳神経外科一般B一生懸命C旅行、スノーボード

塩川健夫
@整形外科A整形外科一般B努力にまさる天才なしC読書

在宅医療に対する足柄上病院の取り組み(第4報)
−かけはしカード発行後1年を振り返り−

地域医療連携室長     
中橋満

 在宅療養中の患者さん及びご家族の方々の不安感を少しでも和らげる目的で、足柄上病院では昨年1月に「かけはしカード」を発行しました。在宅では対応困難な患者さんは近隣の施設に入所をお願いした手前、このような方々にもカードを発行しています。このかけはしカードは、急変時にかかりつけ医に連絡がとれない場合には原則として24時間365日足柄上病院で対応することを約束したものですが、実際には100%理想通り円滑に機能した訳ではなく残念ながら数件の苦情を頂戴しております。そこで今回は発行後1年を経過しましたので分析結果を報告したいと思います。
 平成20年1月現在、252名(在宅療養者108名、施設入居者144名)の方にかけはしカードを発行しました。平均年齢は在宅療養者81.5歳、施設入居者84.2歳と施設入居者が若干高齢となっています。疾患別内訳は両群とも消化器系疾患、中枢神経系疾患(脳出血、脳梗塞など)、呼吸器系疾患(肺炎など)、循環器系疾患など7割以上が内科系疾患となっています。悪性腫瘍は28名(施設入居者3名)と半年前の集計と比較し増加傾向を認めます。施設入居者に大腿骨頚部骨折など整形外科領域の疾患が多いのが特徴ですが、手術後のリハビリを含めた地域連携パスが着々と整備されつつありますので今後は減少してくるものと予想されます。
 この1年間に、かけはしカードを利用された方は延べ111名(施設入居者62名、在宅療養者49名)でした。この数値は葵カードを発行している静岡県立総合病院の倍以上の件数となっており、9割近くを対応している内科医師にとっては大きな負担増となっています。一向に改善されない医師不足はますます勤務医の労働条件を過酷なものとし、今後このようなシステムが継続していくことができるか懸念されます。受診時診断は肺炎(24名)が最も多く、以下吐血・下痢・嘔吐などの消化器症状(20名)と続きます。心肺停止状態で搬送された方が6名いました。約70%の77名の方が入院加療となっており、かけはしカードの利用が妥当であったと判断できます。施設入居者にかけはしカード利用者が多いのは施設の医療体制を鑑みるとやむを得ないと考えます。
 かけはしカードを所有していることを告げたにも拘らず病院で対応を断られたケースが5例ありました。(地域医療連携室に報告があったのが5例で、それ以外の“泣き寝入り”のケースもあるかもしれません。)2例を紹介してみます。
 症例1  84歳男性。肺炎にて在宅療養中。夕方6時頃全身に痙攣が出現したため救急車を呼び受診を依頼したが救命救急の処置中のため対応できないと断られた。やむを得ず他院に入院したが2日後当院に転院となった。
 症例2  92歳男性。肺気腫にて在宅酸素療法を行っていた。発熱のためかかりつけ医と相談し救急受診を依頼するも医師が心臓カテーテルの検査中のため対応できないと断られた。救急対応する医師が検査に入るような体制はおかしいのではないかと苦情あり。この患者さんは幸いにも他院で受け入れて頂きました。
 残りの3例も同様に他の救急患者さんの対応に追われ困難であったようですが、丁重に事情を説明してご理解を頂いたり、受け入れ可能な病院を手配したりする配慮が欠けていたように思われ反省すべき点と考えます。前述しましたように、医師不足は当院でも深刻な問題となっており、当直体制にも悪影響を及ぼしています。しかしながら、現有の少ない勢力の元でも今後在宅医療に貢献できるよう、足柄上病院一同全力を尽くしてまいりたいと思います。

足柄上病院脳神経外科における臨床指標(クリニカルインディケーター)と脳卒中連携パス

脳神経外科部長     
野地雅人

 神奈川県立足柄上病院における脳神経外科の歴史は古く、開設されたのは全国にさきがけて1975年ですから、ざっと30年以上の伝統があります。前任者の山下俊紀部長が就任したのが1982年(昭和57年)であり、23年もの間、県西地区での脳神経外科疾患の治療の中心的役割を果たしておりました。縁あって2005年4月より脳神経外科の診療を引き継がせていただいております。手術件数については1982年から2007年までの26年間の累計で2,935件であり年間100件以上の手術を施行しております。
 当科での臨床指標(クリニカルインディケーター)としてはまだデータとして不十分ですが、最近3年間の主な手術症例の変遷を報告します。傾向として脳腫瘍の治療が手術だけでなく、ガンマーナイフやサイバーナイフのような優れた定位的放射線療法の出現により治療法に幅が出て手術数の減少につながっていると思われます。また脳ドックにより未破裂脳動脈瘤も増加の傾向にあります。2006年2月より「しびれ」を脳神経外科的に総合的に診察し、診断・治療をする「しびれ外来」を開設して以来、頚椎疾患、腰椎疾患、末梢神経の手術件数が増加しています。今後はこれらの手術成績なども検討していきたいと思います。
 脳神経外科の最近の流れとしては大学での脳神経外科医局への入局者が減少し、最近では脳卒中領域の救急患者を脳神経外科のスタッフだけでは診療できなくなっているのが現状です。我々も2005年より3人体制から2人体制での診療を余儀なくされることとなり1日交代のオンコール体制をおこなっております。緊急手術の時は原則として2人以上で手術をすることになるため実際の制約はそれ以上です。また通常の診療時間であれば手術中でも3人体制であれば1人が外来での救急患者さんの対応をすることが可能ですが、2人体制では手術中の患者さんを置いては行けず、非常に残念な実情ですが診療をお断りしていることも現実です。昨今、産婦人科や小児科の医師不足が非常に問題となり、表面化しておりますが次に来るのがおそらく脳神経外科を中心とした脳卒中医療への医師不足であると思われます。足柄上地区では御高齢者が多く、今後脳卒中患者さんの増加は否めません。当院では総合診療科や神経内科、循環器科の医師も脳卒中医療に携わってもらっているため、脳神経外科もどうにかやれているのが現状です。(ここでお礼をいわせていただきます。いつもサポートありがとうございます!)今後、足柄上地区の脳卒中医療で大事なのは周囲の県西地区の病院の連携が大事であると考え、近隣の急性期病院、回復期病院と「脳卒中連携パス」を今年度4月より導入を開始しました。急性期の治療を受け安定した患者さんは、なるべく速やかに回復期への病院に移ることがご本人にとっても救急患者さんを受けるためにベッドを空ける急性期病院にとっても望ましいことでありこれを円滑に実行することが「脳卒中連携パス」のねらいです。
今後も県西地区の脳神経外科に関する医療を高めていきたいと考えています。よろしくお願いいたします。