平成19年10月1日号
秋号(通刊 第25号)

在宅医療に対する足柄上病院の取り組み(第2報)
−地域医療連携室職員による訪問診療の試み−

地域医療連携室長      
中橋満

 在宅医療に伴う患者ご家族の方々の不安感を少しでも解消する目的で発行した「かけはしカード」は、足柄上病院は在宅医療に対して責任を持って対応するという強い姿勢の現れです。かけはしカードを発行してから8ヶ月が経過しましたが、大変好評で本来の機能も十分に果たせているようです。しかしながら、患者さんの中には定期的な通院、処置を必要とする場合もあり、残念ながら肉体的な負担の軽減にまで結びつくものではありません。施設に入居をお願いしても医療器具を装着したままでは入居を制限される場合もあります。一方では、地域医療連携室職員による地域の医療機関の定期的訪問により、施設の職員の方々の慢性的疲弊状態を目のあたりにしています。このような状態を真摯に受けとめ、足柄上病院が在宅医療にもっとお役に立てないかと予てより模索してまいりました。長野県の佐久総合病院では全国に先駆けて在宅医療に積極的に取り組んでおり、既に、1994年に「地域ケア科」を組織しています。医師14名(兼務)、看護師4名、薬剤師1名、栄養士2名を配置し、訪問診療・訪問薬剤指導・訪問栄養指導を病院の業務の1つとして行っています。眼科、神経内科、皮膚科、歯科による往診も要請に応じて行っており、あらゆる専門医療を「在宅」においても受けられるようにすることが佐久総合病院の在宅医療の役割と強調しています。潤沢なスタッフを配置できる病院の体制は垂涎の的ではありますが、広義に解釈すると地域ケア科に相当するものは足柄上病院では地域医療連携室となります。医療職は医師2名(兼務)、看護師3名では佐久総合病院で行っているような理想的とも言える在宅医療を行うことは到底困難ですが、行動規模を縮小することにより現状でも多少在宅医療に貢献できると考えました。過日、足柄上医師会のご了解が得られたため、地域医療連携室の職員が泌尿器科領域の患者さんに限定して院外の往診を始めることに致しました。訪問診療は当面は中橋が担当し、場合により連携室の看護師の協力を得ることにしました。外来診療及び年間450件余の手術を行いながらの往診は大変な負担となります。“なにもそこまでする必要は無いのではないか?”と言う声も聞かれましたが、国の求める在宅医療に対応し、かつ急性期病院として在院日数の短縮を計っていくためには多少の出血はやむを得ないと判断し、決断致しました。手始めに、尿路の留置カテーテルの管理を行ってみることにしました。一口に留置カテーテルと言っても、一番症例の多い尿道留置カテーテル以外に腎瘻・尿管皮膚瘻・膀胱皮膚瘻などの体外から見えるカテーテルと尿管ステントカテーテル・後部尿道留置ステントのような埋め込み式のカテーテルまで多種多様です。埋め込み式のタイプの交換は麻酔をかけたり、X線透視下や内視鏡下に交換する必要があり在宅では困難ですが、他は在宅でも交換可能です。しかしながら、通常のカテーテル交換時においてさえ出血したり、発熱したりの合併症が発生する危険性を伴いますが、なかには超音波検査下や特殊な技術を用いなければ留置できない難しい症例もあり、泌尿器科医の腕の見せどころです。因みに聴診器は内科医師にとってはなくてはならないアイテムですが、泌尿器科医にとっては超音波装置は必要不可欠の医療機器で、“泌尿器科医の聴診器”と言われている位です。留置カテーテルの合併症の一つの尿路結石症は必ずしもレントゲン検査をしなくても超音波装置によっても診断可能ですので、訪問診療の際には超音波装置持参で伺うつもりです。残念なことに現有の機器は重量20sもあり簡単には運べない代物で、大人2人がかりでの運搬になります。(ノートパソコン型の軽量で持ち運び便利な超音波装置も既に販売され流通しているのですが・・・。)高齢社会が進む程、泌尿器科関連の疾患も増加することが予想され、地域の泌尿器科専門医が少ない現状においては、なにかとお役に立てることも多いのではないかと思います。5月より訪問診療を開始しておりますが、在宅療養中で通院が困難な方や、施設入居者で2〜3名の職員の方々同伴のもとでカテーテル管理だけのために通院されている方をまず対象と致しました。将来的に余裕があれば尿路管理のみならず、泌尿器科領域の終末期の患者さんに対する訪問診療も手掛けていきたいと考えています。無論、通常の勤務の合間に往診するため要請があれば随時対応できるという訳ではありませんが、可能な限り時間を調整して対応してまいりたいと思います。9月現在の訪問診療登録患者さんは10名となっています。可能であれば20名位を目標としていますが、なにぶんにも生来の方向音痴のためカーナビの助けを借りても再々道順を間違え、通りがかりの方々にお尋ねして訪問している始末です。また、どうせ行うならばよりきめ細かな訪問診療をと考え、留置カテーテルの交換のみならず超音波検査・血液検査・血圧測定等を行うと1人の患者さんに1時間位を要しています。訪問看護ステーションの協力も大変有難く感謝しております。訪問診療開始後4ヶ月が経過しましたが、患者さん及びご家族の方々からは“足柄上病院が、こんな事までしてくれるなんて”と大変な好評を得ており、改めてやりがいを感じております。
 院外への訪問診療は足柄上病院としては初の試みではありますが、病院の理念である「あ」「し」「か」「み」の「し」(社会の要請を担う政策医療)、「か」(患者中心の医療の実践)に正に合致した行動と考えています。早いもので小生が足柄上病院に奉職して25年、定年まで残すところあと数年となってしまいました。どこまでお役に立てるのか?、長続きするのか?、等々不安を抱えたままでのスタートですが、患者さん及びご家族の方々に少しでも安心して在宅療養に専念していただけるよう微力ながら協力してまいりたいと思います。

ご挨拶と予防接種について

小児科部長       
山岡貢二

 6月より足柄上病院小児科に赴任した山岡貢二です。平成10年から2年間こちらでお世話になりましたので、今回は出戻りです。前回に比べて病棟も新しくなり、夜間休日の検査や処方ができるようになるなど、「足柄上病院は地域医療の中核病院として一層充実した」と感じています。小児科のスタッフは琴寄医長、奥山医長、富田医長そして私の4名です。
 ここでは予防接種現状と問題点をお話したいと思います。「足柄上病院ではあんまり予防接種やってないようだし、予防接種なんか必要ないんじゃない」とお考えでしたら、それは間違いです。足柄上病院は契約のある市町村と一部の種類のワクチンしか接種ができないことになっており、その殆どを他の先生方にお任せしています。小児の病気は感染症が主体で、予防接種はとても大切です。
 予防接種には定期接種と任意接種があります。定期接種は国が予防接種法によって接種を強く勧めているものですが、平たく言えば母子手帳についている無料券によって受けることができる予防接種です。MR(はしか・風疹混合)ワクチン、BCG、ポリオワクチン、三種混合ワクチン、日本脳炎ワクチンがありますが、日本脳炎ワクチンは現在接種が制限されています。任意ワクチンは希望があれば接種できるワクチンで、お金を払って接種します。インフルエンザワクチン、水痘ワクチン、ムンプスワクチンなどがあります。
 定期接種はきちんと接種しましょう。接種時期がきたらお住まいの市町村からお知らせがあるはずです。特にMRワクチンは1歳を過ぎたらできるだけ早い時期に接種してくだざい。
 毎年冬になると「インフルエンザ脳症」という言葉を耳にすることがあると思います。多くは1〜2歳の幼児がインフルエンザに罹患した初期に発症しますが、5歳まで発症することがあります。それどころか、昨シーズン問題となった年長児の異常行動も脳症の可能性があります。脳症の発症には人種差があり、白人では少ないためアメリカの小児科の教科書には「インフルエンザ脳症」の病名がありません。それでもアメリカでは2歳までの乳幼児と同居する家族全員のインフルエンザワクチン接種を勧奨しています。より重症な脳症を発症しやすい日本国民に対して「インフルエンザワクチンを接種しましょう」と、国が積極的に呼びかけない方が不思議です。インフルエンザワクチンの欠点は、同居している人が発症した場合に二次感染を防ぐ力が弱いという事です。「家族全員が予防に心掛け、幼い子どもを守る」という考えが必要です。
 より副作用の少ない三種混合ワクチンを開発するなど、日本の予防接種は20年ぐらい前には世界のトップランナーでした。しかし、その後副作用の問題などで開発が滞ったままです。この間に世界中でいろいろな予防接種が開発され、今の日本の予防接種は周回遅れの感があります。その最たるものがインフルエンザ桿菌ワクチンです。インフルエンザ桿菌とは耳慣れない名前での菌ですが、小児科領域では化膿性髄膜炎を起こす菌のNo.1として悪名が高い菌です。毎年1000人前後のこどもがこの菌による化膿性髄膜炎に罹患し、数%のこどもが亡くなり20〜30%のこどもが重い後遺症を患います。このワクチンは1980年代に欧米で導入され、化膿性髄膜炎が100分の1以下に減りました。1998年にWHOは定期接種にすることを世界中の国に勧告し、現在90カ国以上で定期接種化されています。小児科医の間では「インフルエンザ桿菌ワクチンを接種していないのは北朝鮮と日本だけ」というジョークがとびかっています。子どもの人権に関しては、日本は北朝鮮と同等ということでしょうか?
 子供の化膿性髄膜炎の原因として2番目に多い肺炎球菌に対する新ワクチンもできており、多くの国で導入されています。勿論、日本では認可すらされていません。この文章が、これらのワクチンを早期に定期接種として導入すべきであること、予防接種こそ世界標準が大切であることを皆様にご理解いただける一助となればと思います。

足柄上病院外科における臨床指標
(クリニカルインディケーター)

外科部長        
笠原彰夫

 当院では、現在の診療の内容を患者様に情報公開する事を目的に臨床指標(クリニカルインディケーター)を開示する事になりました。臨床指標とは,診療の過程及び目標を定量的に設定し、その結果から医療活動の資質の改善を目指すものです。この項目は全国的に統一された物ではなく今回は既存のもの(国立病院機構病院グループ)に従い報告させて頂きます。以下の表に平成18年度のがん分野について臨床指標を掲げました。
 当院規模の公立病院の手術件数としては、おおむね標準的と思いますが特筆すべき点として、胃癌や、大腸癌の腹腔鏡補助手術の件数の多さとその充実と思われます。また、肝臓切除の件数も某週刊誌に神奈川県内での代表的病院として掲載されました。さらに乳房温存手術も専門スタッフの努力により満足しうる件数となりました。ただし、乳癌については、全国的に放射線治療医の減少により、温存手術後の放射線治療が困難になり、来年度は、その数の減少が予想されます。今後は、非定乳切と乳房再建術の併用も一方法として検討中です。当院外科は横浜市大外科を中心にスタッフの入れ替えがありますが、その利点としてそれぞれの専門性を生かした各部門の充実が挙げられます。今回は、がん分野のみについて報告させて頂きましたが、その他の良性疾患や、救急医療に際し、全ての外科領域の網羅を目指しながら、専門分野、得意分野の更なる充実を目指したいと思います。

食道がん手術 件数 3
胃がん手術(胃亜全摘)件数 11
胃がん手術(胃全摘^t)件数 12
胃がん手術(腹腔鏡下胃切除)件数 8
大腸がん手術(開腹結腸手術)件数 21
大腸がん手術(腹腔鏡下結腸切除)件数 7
大腸がん手術(開腹直腸切除)件数 13
肝臓手術(肝切除)件数 6
膵臓がん手術(膵頭十二指腸切除)件数 1
肺がん手術 件数 6
乳がん手術(非定乳切)件数 8
乳がん手術(乳房温存手術)件数 8
甲状腺手術(甲状腺腫瘍摘出術)件数 6

院内情報コーナー

病院ボランティア養成講座

 松田町・山北町の両社会福祉協議会、足柄上病院の共催により、当院ボランティア連絡会のご協力のもと、病院の通院・入院をサポートする病院ボランティア養成講座を実施します。初心者、男性の方も大歓迎です。皆様の参加をお待ちしています。
※参加費無料
場  所: 県立足柄上病院 3号館1階 講義室
時  間: 13:30〜15:30
定  員: 30名(先着順)
申込締切: 10月18日(木)まで
申込み・問合せ:松田町社会福祉協議会   TEL0465‐82‐0294
        山北町社会福祉協議会   TEL0465‐75‐1294
        足柄上病院地域医療連携室 TEL0465‐83‐0351(内線3176)

開催日(全4回) 内容

10月22日(月)
講義・病院ボランティアとは 柳川氏・病院ボランティアの活動紹介
講演「いのちの大切さをわかちあうために」県立がんンセンター緩和医療科部長 奥野滋子氏

10月29日(月)
講義と実技 ・院内誘導と車イスの操作法 子安氏・時田氏・移動図書、入院患者の散歩・話し相手他 ランパスの会

11月5日(月)
同上

11月12日(月)
講義・感染症と予防方法について 與良病棟科長全体会(まとめ)

足柄上病院・開成町共催
第7回「医学講座」についてのお知らせ

めざせ! 生き生き家族
〜高齢者と、家族の健康をみつめる〜
からだへの気配り、はじめませんか?

テーマ: 「最近増えている“がん”」
第一部:乳がんの自己検診と治療 第二部:大腸検診と大腸がん
日 時: 11月17日(土曜日) 10:00〜12:00
場 所: 開成町民センター 2階 中会議室A
講 師: 足柄上病院 外科医師 吉田達也/総合診療科医師 亀田 亮
対象者: どなたでも参加できます。
参加費: 無料
申し込み:必要ありません。当日会場へお越しください。
その他: 休憩時間に血糖測定と模擬乳房の触診体験を行います。
お問い合わせ…リハビリテーション科 佐々木

発 行:神奈川県立足柄上病院
〒258‐0003神奈川県足柄上郡松田町松田惣領866‐1
(TEL)0465‐83‐0351(FAX)0465‐82‐5377
http://kanagawa-pho.jp/osirase/byouin/asigarakami
編 集:神奈川県立足柄上病院地域医療連携室 (内線)3178